背景
川崎市では、市やスポーツ団体などが主催する大会・イベント向けに、公共屋内スポーツ施設の優先予約を受け付けています。しかし、この優先予約の調整プロセスは担当者による手作業に依存しており、非常に多くの制約条件が絡み合う複雑な業務となっていました。
- 予約希望の集中と複雑化:
年間約50団体・500件に及ぶ予約希望の多くが土日祝日に集中しており、年間の予約希望の組み合わせは9500通りにも達します。また、施設ごとに設備や規模が異なるため、単純な代替施設の提案による調整が困難です。
- 手作業による調整の限界:
Webフォームを通じて収集した予約希望に対し、担当者が手作業で希望の重複確認や調整を行います。予約希望件数の多さにより、抜け漏れや手戻りが発生しやすく、調整完了に約1か月の期間を要していました。
- 公平性の担保と心理的負荷:
複数団体からの予約希望が重複した際の判断は、担当者の経験則や属人的な暗黙知に依存しており、客観的根拠に基づく公平性の説明が困難でした。そのため、意思決定に伴う心理負荷も大きい業務となっていました。
これらの課題に対し、川崎市とQuanmaticは、行政業務の効率化と透明性向上を目指し、「量子実証 川崎モデル創出事業」として、量子計算技術と数理最適化を組み合わせた実証を実施しました。
取り組み・成果
本実証では、複雑な予約調整業務を量子計算型の数理モデルとして定式化し、量子計算技術を活用した解法を適用しました。理論検証にとどまらず、現場で運用できるWebアプリケーションとして実装し、実業務での適用と効果を検証しました。
その結果、従来の手作業による調整と比較し、「第一希望の割当数」「公平度*¹」「所要時間」の3つの観点で明確な改善が確認されました。
- 所要時間:75%短縮(調整期間は約1か月から約1週間に短縮、アプリ上の計算時間は1回あたり約1分)
また、実装したWebアプリを活用することで、以下の業務改善効果も確認されました。
- 作業負荷の軽減: 調整作業を自動化することで所要時間を短縮するとともに、抜け漏れや手戻りも削減できました。
- 属人化の解消: 担当者の暗黙知に頼っていた判断基準をモデル化し、誰でも使える仕組みとして実装しました。
- 説明性・公平性の担保: 数理モデルに基づいて割当結果の根拠を明確に示せるようになりました。予約希望との適合度も数値で可視化でき、判断時の心理的負荷の軽減にもつながりました。
*¹公平度:各団体の予約希望がどの程度バランスよく満たされているかを示す指標(0〜1)。0に近いほど偏りが少なく、今回の実証では約0.1となり、ほぼ均等な割当が実現されました。
参考